Jackと英語の木

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zoom RSS Paper(紙)とBook(本)の言葉ができるまで:古代フェニキアとギリシャがからむ英語の裏話2

<<   作成日時 : 2013/11/21 19:33   >>

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英語の言葉には歴史があり、物語があります。前回assassin(暗殺者)について書きましたが、今回も物語性のある単語としてPaperとBookを選んで書いてみました。

現在では種々の紙の種類があります。
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本は最初は巻物、綴じものでした。

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最近はパソコン、タブレット、スマホなどの利用で、紙や活字離れが進んでいると言われます。私はなるべく紙に書いた本を読むようにしています。またなるべく紙に書くようにしています。紙(paper)と本(book)という言葉には歴史的な物語があり、それははるか昔、フェニキアが栄えた頃までさかのぼります。

昔、フェニキアのある港町を、ギリシャ人はブブロス(bblos)と呼んでいました。今のレバノンの地中海沿いのこの港町は、現在はジュベイル(Jbeil)と呼ばれていて、ここの遺跡群はユネスコの世界文化遺産に登録されています。フェニキア人が紀元前3000年頃から住み始めたところであり、当時この町は、エジプト産のパピルスの貿易の拠点で、現地ではそこをグブル(gublu)といっていました。ギリシア人はこのグブルをギリシャ風にブブロスbblosと呼んでいましたが、次第にグブルのgublがbblへ変化して、ブブロス(bblos)からさらには、ビブロス(byblos)と呼ぶようになりました。

古代フェニキアの活躍した地中海世界。ビブロスがあります。

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フェニキアのビブロス、現在のジュベイルの町

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パピルス草は、古代エジプトのナイル川流域の河口付近の湿気の多い土地に生えてていた、高さが3mにもなる多年草で、その外皮は紙の原料となりました。パピルスは紙だけの用途だけでなく、古代エジプト人には生活上きわめて重要な材料でした。茎は食用になり、また繊維状の皮からはマットや篭、帆、ロ−プ、靴などを作り、さらに茎を束ねて舟もつくりました。エジプトのパピルスから作られた紙や本は当時、地中海で勢力を誇っていたフェニキア人によって、ギリシアの各ポリスに運ばれていました。また、このグブル(ビブロス)の港町は、紀元前3000年頃にレバノン杉の貿易拠点にすでになっていた古い港町でした。紙の原料であるパピルスは、このフェニキアあたりでもこの頃、栽培されるようになっていたようで、グブルの港町はパピルス紙関係の貿易拠点であり、一大市場でもありました。

パピルス

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紀元前1200年ころに、アルファベットの元となったフェニキア文字が生まれたのもここでした。フェニキア文字は、彼らの地中海貿易を通じてギリシャに伝わり、次第にギリシャ文字となり、さらにラテン語でアルファベットになっていきました。なお、アルファベットとは、ギリシャ文字の最初の2文字であるα(アルファ)とβ(ベータ)からきています。

フェニキア文字とアルファベット

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ギリシア人はフェニキアから文字を導入し、書物などを輸入していました。そのフェニキア文字と書物の文化はギリシャへ多大な影響がありました。ギリシア人は、フェニキアのビブロスから運ばれてくる紙の本などを、「ビブロスもの」という意味で biblion と呼び、ビブロスという言葉自体も紙、紙製品を指すようになっていきました。ここから、本(紙の巻物)、書物をあらわすギリシア語ビブリオン biblion が生まれ、さらにビブロス(Byblos) から後に「バイブル bible=聖書 The Book」という英語ができました。biblionからは英語の書誌学 (bibliography)が派生しました。これは書物biblioと、書くgraphが合成してできた言葉です。パピルスPapyrusからは、英語の「ぺーパー/paper」が生まれました。

Bible(聖書)はギリシャ語のビブロス(byblos)から派生したことばですが、The book(聖書)と言われるように、「書物」も意味していました。書物とはビブルス(byblos)、すなわちパピルス(papyrus)の上に書かれたものでした。

Bible(聖書)

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ところで、パピルスで作られた巻物の書籍は当時は手書きで、1つ1つ手作りで巻かれて、とても貴重なものでした。左から右へ読むようにできていて、読み終えた部分を左手のなかへ巻き取られていきました。今のコンピューター画面を上下するのを巻く=スクロール(scroll)と言いますが、この言葉は、巻物を巻いてページを移動する scroll に由来しています。確かにパソコン画面では巻くのではないのになぜscroll=巻くで表現するのか、考えてみるとおかしいですね。またvolumeという言葉はパピルスから作られた巻物をラテン語でウォルミナ( volumina) と呼ばれていて、そこから英語のヴォリューム( volume)(巻)という言葉が生まれました。

ギリシャでは当初、本は巻物でした。

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さてここまで本(book)の語源は、パピルス(papyrus)からのビブロスbyblosと説明してきましたが、違う説もあります。それはアングロ・サクソン語のブナの木のbocであるとの説です。紙のようなものがまだ存在しない大昔のヨーロッパでは、ケルト人は、ブナの木の樹皮を剥いで束ねて、それに文字を書いて、本のようなものを作っていたというのです。どちらの説が正しいかはっきりしませんが、ここでは物語性のある英語の話なので、byblosを主に取り上げました。

余談ですが英語のbookkeeping は「簿記」のことですが、「簿記」という日本語は英語で聞く音が、ボッキーのような感じに聞こえることから、福沢諭吉が「簿記」という言葉を作った言われます。bookkeepingは、帳簿に入出金の記録を書き留めること (book) を続けていくこと (keeping) からbookkeepingとなったものです。

ところでBookには本の意味の他に、「予約する」という意味があります。予約にはreserve の単語もあります。I booked a hotel room in Tokyo.(東京のホテルを予約しました)といった形で動詞として使われます。しかし、どうしてbook「本」がbook「予約する」になるのでしょうか? これには上述のもうひとつの"book"の語源説のbeech(ブナの木)が関係してきます。ブナの木の皮に文字を記したのが本book始まりと言われますが、紙を束にして綴じ合わされているものは"book"と呼ばれるようになりました。このことから、宿泊などの予約を紙の束に書き留める行為も"book"と言うようになったと言われます。

ブナの林

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このbookとreserveはともに予約するの意味がありますが、その違いはなんでしょうか?reserveのほうが事前に確保、貯蔵するの意味が強く、bookは事前に確保するだけでなく、帳簿に付けるの意味合いが強い。どちらも予約するには変わりはないのですが、例えばホテルの場合、お客側からの立場ではreserveで予約する、ホテル側からの立場では、bookで予約を受付、帳簿に付けるといった感じでしょうか。bookはイギリスでよく使われると言われますが、実際にはそれほどの違いはないようです。

Bookは予約するの意味もあります。

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Paper紙とbook本について、調べてみると、それぞれ単独で詳しく書いてあるものは多いのですが、そのつながり、関連話を面白く書いてあるものは少なく、ちょっと余分目に書いてしましました。もっともこのブログの特徴は、現在、そのような傾向にあるネット上の記事の隙間を埋めるものですので、余分、余談もいいかなと思っています。これを見ている皆さん、紙(Paper)や本(Book)に親しんでいますか?

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
エジプトに行った時、巻物のパピルスに字が書かれたものを見たことがあります、それにパピルスの上に字が書かれた壁絵を買った覚えがあります。パピルスは歴史上重要な役割をしているのは知っていましたが。パピルスから英語のペーパーが生まれたり、書物とはビブルス、すなわちパピルスの上に書かれたものとか初めて知りました。book,reserve,区別無しに使用していましたが、本来は違いがあったんですね,予約のbookの由来面白かったです。
Anne
2013/11/21 20:59
anneさん
私もエジプト展でパピルスに書かれた絵の模写を買いました。紙の原料としてパピルスは次第に廃れて、現物は博物館でも行かないと見るのは難しいようです。

bookと何となく使っていますが、こういったいきさつを知ると、おろそかにできないですね。最近リフォームで本を大量に廃棄してしまいましたが、立派な本だと、何となく捨てるときに罪悪感のようなものがありました。

ブログには書かなかったのですが、聖書という日本語は比較的新しく考え出されたもです。Bibleの原書には、その書自体のことはbyblosのような言葉で書いてあって、漢字で意味する「聖書」のような意味合いの言葉ではないそうです。この辺、外国語と日本語の翻訳のむつかしいところですね。
Jack
2013/11/22 19:05

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