「雷を盗む」が「お株を奪う」ことだって?ー"Steel one's thunder"は芝居の雷から

梅雨明けや夏の夕立などが今は多い季節です。今回は雷にちなんだ英語のThunderにからむお話です。

人の得意にしているものを横取りすることを「人のお株を奪う」と言いますね。英語にはこれに相当する意味の表現がいくつかあります。その中で面白いのはSteel one's thunderです。one'sの部分はだれかで、his, your, myでもよい。要するに人がやっている良い方法や考え、得意技を、横取りしてしまうことです。これをやられた方がくやしまぎれに叫ぶのが、あいつは私のお株を奪ったHe stole my thunderです。英語を見て、「彼は私の雷を盗んだ」と日本語に直訳するとなんのことか分からなくなります。ではなんでお株が雷になるのでしょうか。

まず日本語の「お株を奪う」ですが、「株」とは近世にはお上からいただいた世襲、継続を許された特権や地位、家業で、また得意なことを表しました。「お株を奪う」とはこのような特権や得意技を出し抜いて横取りすることです。

18世紀の初め、イギリスの詩人で劇作家のジョン・デニスの作品で悲劇の「アピウス・アンド・バージニア」が1709年に上演されることになった。彼は劇中の雷の擬音を新しく考案して、より劇的に芝居を盛り上げるつもりだった。観客はきっとこれに感動するに違いないと密かに思っていた。ところが芝居が始まっても芝居の評判はよくない。新しい雷の効果音はそれなりによかったが、芝居全体の評判を良くするほどではなかった。興行成績は悪く、結局上演は打ち切りになってしまった。

ガックリきた彼は、そのあと上演されたシェークスピアの「マクベス」の評判が良いので、どんな具合で良いのか確かめに行ったら、なんと彼が考案した雷の効果音が嵐のシーンで使われていた。腹が立ってきたデニスは劇中に立ち上がって、大声で叫んだのでした。「卑劣者!私の芝居は打ち切り、その効果音だけ盗むとは!」。

彼の作品はあまり後世には残らなかったが、この時叫んだ"Steel my thunder"とその物語は後世まで語り継がれ、今でも日本語の「お株を奪う」に相当する意味として英語では使われています。舞台の中の雷の新しい効果音を了解もなく盗むとは、Steel my thunderと私でも言いたくなりますね。

こんな雷を少し前に見ました。でも雷は光と音で出来ているのです。

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Thunderは雷鳴のことで、いわゆるごろごろする音のことです。稲妻はLightningでピカーと光ることです。この両方を合わせたのが雷電でThunderboltです。雷があった翌日に、アメリカ人にDid you see thunder yesterday?と言ったら怪訝な顔をされたとの話もあります。日本語の雷は両方の意味を持っているので便利ですね。雷は「神鳴り」からきているようで昔の人は神様のようにとらえていた。ギリシャ神話のゼウスも雷神で、稲妻のするどい矢で相手を威嚇したそうです。

英語では"Steel one's thunder"の他に、「お株を奪う」ことを表現した単語、慣用句がいくつかありますので参考に書いておきます。

Beat somebody at his own game. お株を奪う。

Upstage someone.お株を奪う(誰かに勝る) 

Steel the show.お株を奪う(人気をさらう)

Outdo xxx  xを凌ぐ、勝る、有名である

Go beyond xを超える、勝る

その他Steel を使った慣用句

Steel a glance 盗み見をする。

Steel a moment. 機会を見つける。

Steal a march. 忍び足で近づく。

雷で昔の夏を思い出しました。すごい暑い日には、入道雲がモクモク上がって、夕方には黒い雲になり、急に夕立と雷がやてきて、30分くらいでさっとそれが終わると、気温が急に下がり、さわやかな風が吹いてきます。木々はみずみずしく緑を増して元気になっています。ふと見上げるとかなたに虹がかかって夕焼けに映えています。節電と暑い夏、ふとこんな昔のような夏が今年あったらいいなと思いました。

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