世界で一番早く一日が始まるのはどこ?;世界標準時と日付変更線の不思議
地図をよく見ていると太平洋上に南北に貫く変な点線がありますね。これは日付変更線(International Date Line)です。昔は飛行機で日付変更線を越えると、その記念の証明書をくれたものでした。今回は日付変更線と時間をめぐる話です。
世界で一番早く一日が始まる国はどこでしょうか?太平洋の島国のフィジー、トンガ? 正解はキリバス共和国(Republic of Kiribati)です。下の地図をご覧下さい。日付変更線がベーリング海峡から降りてきてハワイの南で大きくコの字型に変形しています。日付変更線はもともと東経180度で南北に境界があるはずです。どうしてここだけこんなコの字型になったのでしょう。
太平洋上の日付変更線
キリバスはギルバート諸島、ライン諸島、フェニックス諸島などで構成される太平洋の真ん中の東西に大きく広がる島国で、第二次大戦中は日本が一時占領していました。その後クリスマス島では核実験場にもなっていました。もともとは首都タラワの時間を標準とし、ライン諸島を日付変更線の境界にしていました。しかし1つの国で日付が違うのは不便であり、かつ日付変更線を国の東側まで大きく移動すれば世界でその日の始まるのが一番となり観光にも良いとのことで、1995年に東側に大きく日付変更線を移動してしまったのです。
コの字型に東に日付変更線が移動したので、たとえばハワイからオーストラリアのシドニーへ南西方面に移動する飛行機に乗ると、ハワイ出て東西に伸びる日付変更線ですぐ翌日になり、しばらくするとまた変更線でもとの日に戻り、さらに行くと今度は南北の日付変更線で翌日になるような、次々と日が変わることも時間帯によってはあり得ます。またキリバスからすぐ南にある島国サモアへ行くだけでも翌日になることもあります。
日付変更線って南北に境界があり、そこを横断するものと決め付けているとどうして!と言った事態になりますので、この際ちょっと理解を深めてみてください。
他の太平洋上の日付変更線でもちょっと面白いところがあります。それはロシアとアメリカ(アラスカ)の間のベーリング海峡の真ん中を境界としているところです。海峡の間には大ダイオミード島(ロシア)と小ダイオミード島(アメリカ)があり、その真ん中に日付変更線があり、そこから南では変更線は斜めに通っています。東経180度より東にずれている海峡の二つの島の真ん中を日付の境界にしたのは、やはり東西の冷戦時代では同じ時間帯に出来なかったのです。ここは冷戦時代の東西がぶつかり合う最先端のところで、日も変わる、体制も変わる場所であり、ぴりぴりしていました。
さてどうして太平洋上の真ん中に、日付変更線ができたのでしょうか?それは世界標準時と子午線(Meridian)との関係です。イギリスはかって世界一の海運王国でした。もちろん諸国とも話し合ってのことですが、その力で地球の南北の経度(子午線:Longitude)について、イギリスのグリニッジの子午線を経度”0”とし(本初子午線と呼ぶ)、そこで東経(East Longitude)と西経(West Longitude)に別れ、地球の反対側の東経180度を日付変更線としたのです。もし経度0のところに日付変更線と決めると、イギリス国内で日付が二つに分かれてしまい、とても不便なことになると気づき、グリニッジ子午線を標準時で”0”時間とし、日本はそれより9時間進んだ時間にしたのです。ちなみに日本語の子午線(経線)と言うのは、昔方角を干支(えと)で表していて、子(北)と午(南)を通る織物の糸のようなの線だからといわれています。
ところで皆さんは、世界で多く使われている世界標準時はグリニッジ標準時(GMT=Greenwich Mean Time)だと思っていませんか?それはもう昔のことで、今はUTC(Coordinated Universal Time)「協定世界時」がもっとも利用され、これが世界標準となっています。1972年にGMTからUTCへの移動が決まりました。脱線ですが、略称について、英語読みだと本当はCUTですが、フランス語読みの略TUCとぶつかりあい、中間ととってUTCの略になったとのことです。
日本はこれに基づき東経135度の明石市を基準とした日本標準時JST(Japan Standard Time)を制定しています。UTCは世界各国に設置された多くの国際原子時計を基に、パリにある原子時計を基準にしています。日本にも10台ほど原子時計が設置されています。
皆さんは国際間の飛行機に乗ると、自分の時計を日本時間と現地時間をどこかで切り変えていると思いますが、パイロットはUTCを基準にして運行しています。機内の時間の説明はお客用に日本か現地かの時間で話しています。これは船でも同じです。
中国は幅5000Kmの国土があり、本当は4つくらいの時間帯があってもよさそうですが、一つの時間で広い国土を運用しています。北京近くの経度を標準にして「北京時間」と称して標準としていますが、北京で正午でもはるか西の西域のあたりはまだ朝で、会社へ出勤時間は標準時で夜中の4時ごろといった変なことになっています。それで各地方には「新疆時間」などと言われる地方時間があり、人々は実際にはそれで運用しています。参考に「世界時差地図」と「国土が広い国の面積と時差数」を書いておきます。
世界時差地図:
広い国と時差の数:
国:( )内は時差数 面積(万Km2)
1.ロシア(9) 1709
2.カナダ(6) 998
3.中国 (1) 964
4.アメリカ(5) 962
5.ブラジル(3) 851
昔マゼランが地球と逆回転で世界1周をしてスペインに戻ってきた時、なぜかスペイン時間より1日遅れていたのに気がついたのが、時差を意識した始まりのようです。私も時差ぼけ(Jet lag)に何回かなりました。なんともいえない変な気分でした。時差ぼけを繰り返しているとあまり脳によくないとの最近アメリカの研究発表も出ていますのでご用心を!
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日付変更線が通るベーリング海峡と日付が分かれる二つの島
http://jp.beringproject.org/?page=project/main02_3
時差ぼけは脳にあまりよくないとのアメリカの研究発表
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2776743/6512469
世界で一番早く一日が始まる国はどこでしょうか?太平洋の島国のフィジー、トンガ? 正解はキリバス共和国(Republic of Kiribati)です。下の地図をご覧下さい。日付変更線がベーリング海峡から降りてきてハワイの南で大きくコの字型に変形しています。日付変更線はもともと東経180度で南北に境界があるはずです。どうしてここだけこんなコの字型になったのでしょう。
太平洋上の日付変更線
キリバスはギルバート諸島、ライン諸島、フェニックス諸島などで構成される太平洋の真ん中の東西に大きく広がる島国で、第二次大戦中は日本が一時占領していました。その後クリスマス島では核実験場にもなっていました。もともとは首都タラワの時間を標準とし、ライン諸島を日付変更線の境界にしていました。しかし1つの国で日付が違うのは不便であり、かつ日付変更線を国の東側まで大きく移動すれば世界でその日の始まるのが一番となり観光にも良いとのことで、1995年に東側に大きく日付変更線を移動してしまったのです。
コの字型に東に日付変更線が移動したので、たとえばハワイからオーストラリアのシドニーへ南西方面に移動する飛行機に乗ると、ハワイ出て東西に伸びる日付変更線ですぐ翌日になり、しばらくするとまた変更線でもとの日に戻り、さらに行くと今度は南北の日付変更線で翌日になるような、次々と日が変わることも時間帯によってはあり得ます。またキリバスからすぐ南にある島国サモアへ行くだけでも翌日になることもあります。
日付変更線って南北に境界があり、そこを横断するものと決め付けているとどうして!と言った事態になりますので、この際ちょっと理解を深めてみてください。
他の太平洋上の日付変更線でもちょっと面白いところがあります。それはロシアとアメリカ(アラスカ)の間のベーリング海峡の真ん中を境界としているところです。海峡の間には大ダイオミード島(ロシア)と小ダイオミード島(アメリカ)があり、その真ん中に日付変更線があり、そこから南では変更線は斜めに通っています。東経180度より東にずれている海峡の二つの島の真ん中を日付の境界にしたのは、やはり東西の冷戦時代では同じ時間帯に出来なかったのです。ここは冷戦時代の東西がぶつかり合う最先端のところで、日も変わる、体制も変わる場所であり、ぴりぴりしていました。
さてどうして太平洋上の真ん中に、日付変更線ができたのでしょうか?それは世界標準時と子午線(Meridian)との関係です。イギリスはかって世界一の海運王国でした。もちろん諸国とも話し合ってのことですが、その力で地球の南北の経度(子午線:Longitude)について、イギリスのグリニッジの子午線を経度”0”とし(本初子午線と呼ぶ)、そこで東経(East Longitude)と西経(West Longitude)に別れ、地球の反対側の東経180度を日付変更線としたのです。もし経度0のところに日付変更線と決めると、イギリス国内で日付が二つに分かれてしまい、とても不便なことになると気づき、グリニッジ子午線を標準時で”0”時間とし、日本はそれより9時間進んだ時間にしたのです。ちなみに日本語の子午線(経線)と言うのは、昔方角を干支(えと)で表していて、子(北)と午(南)を通る織物の糸のようなの線だからといわれています。
ところで皆さんは、世界で多く使われている世界標準時はグリニッジ標準時(GMT=Greenwich Mean Time)だと思っていませんか?それはもう昔のことで、今はUTC(Coordinated Universal Time)「協定世界時」がもっとも利用され、これが世界標準となっています。1972年にGMTからUTCへの移動が決まりました。脱線ですが、略称について、英語読みだと本当はCUTですが、フランス語読みの略TUCとぶつかりあい、中間ととってUTCの略になったとのことです。
日本はこれに基づき東経135度の明石市を基準とした日本標準時JST(Japan Standard Time)を制定しています。UTCは世界各国に設置された多くの国際原子時計を基に、パリにある原子時計を基準にしています。日本にも10台ほど原子時計が設置されています。
皆さんは国際間の飛行機に乗ると、自分の時計を日本時間と現地時間をどこかで切り変えていると思いますが、パイロットはUTCを基準にして運行しています。機内の時間の説明はお客用に日本か現地かの時間で話しています。これは船でも同じです。
中国は幅5000Kmの国土があり、本当は4つくらいの時間帯があってもよさそうですが、一つの時間で広い国土を運用しています。北京近くの経度を標準にして「北京時間」と称して標準としていますが、北京で正午でもはるか西の西域のあたりはまだ朝で、会社へ出勤時間は標準時で夜中の4時ごろといった変なことになっています。それで各地方には「新疆時間」などと言われる地方時間があり、人々は実際にはそれで運用しています。参考に「世界時差地図」と「国土が広い国の面積と時差数」を書いておきます。
世界時差地図:
広い国と時差の数:
国:( )内は時差数 面積(万Km2)
1.ロシア(9) 1709
2.カナダ(6) 998
3.中国 (1) 964
4.アメリカ(5) 962
5.ブラジル(3) 851
昔マゼランが地球と逆回転で世界1周をしてスペインに戻ってきた時、なぜかスペイン時間より1日遅れていたのに気がついたのが、時差を意識した始まりのようです。私も時差ぼけ(Jet lag)に何回かなりました。なんともいえない変な気分でした。時差ぼけを繰り返しているとあまり脳によくないとの最近アメリカの研究発表も出ていますのでご用心を!
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日付変更線が通るベーリング海峡と日付が分かれる二つの島
http://jp.beringproject.org/?page=project/main02_3
時差ぼけは脳にあまりよくないとのアメリカの研究発表
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2776743/6512469
この記事へのコメント
後に書かれている、時差ぼけの影響こわいですね。不規則な時間を送る人たちに起こりえる、さまざまな病状、まさに職業病だと思いました。時差ぼけの影響回避の中で、時差があればあるほど、休養が必要ということは、納得です。覚えておきます。
今まで時差ぼけを軽視していましたが、私もこれからは、なったらよく休むようにします。不規則な生活もよくないですね。人間の体には一定のリズムがあり、要するにそれを乱さないことと思います。
2011年12月末にサモアが日付変更線をずらして世界でも一番早く日が始まる国との最近のニュースがありますが、ニュースの説明が足らず、よく地図を見ればわかる通り、相変わらずキリバスが一番早い。これは夏時間などを考慮しない時間です。この点違いする人が増えそうです。
Jackさんのコメントの「違いする」は「勘違いする」