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zoom RSS 「蛍の光」と原曲「オールド・ラング・サイン」について-NHK朝ドラ「マッサン」にちなんで

<<   作成日時 : 2015/02/07 19:29   >>

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2014年10月からNHK朝の連続ドラマで「マッサン」が放映され、視聴率も好調です。このドラマはニッカウィスキーの創始者である竹鶴政孝(マッサン)が、国産ウイスキーを初めて日本で作り上げるまでの苦労物語です。竹鶴は、若い頃、スコットランドに留学して、ウイスキーの作り方を学んできました。そしてサントリーの山崎工場で日本で初めての本格的なウイスキーを、サントリーの創始者である鳥居信治郎と共に造りました。その後、独立して、北海道の余市でニッカウイスキーを創設し、本格的なウイスキー作りが始まったのです。マッサン(竹鶴政孝)の奥さんはスコットランドに留学のときに知り合ったエリー(実際はリタ夫人)です。この人たちの名前は、テレビ・ドラマではすべて似たような名前に変えてあります。

リタ夫人(ドラマではエリー)の故郷はスコットランドであることから、番組の始まり場面はスコットランドの麦畑であり、しばしばスコットランド民謡の「蛍の光」が流れます。この歌は、日本では卒業式など別れの曲として扱われていますが、スコットランドではそういう意味合いの歌ではありません。

イギリスの北部にあるスコットランド

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マッサンのモデルとなった竹鶴政孝とリタ夫人

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そこで「蛍の光」とその原曲やスコットランドにからむ話を書いてみました。

◆日本版「蛍の光について」

<蛍の光:歌詞>

蛍の光 窓の雪
書(ふみ)読む月日(つきひ) 重ねつつ
いつしか年も すぎの戸を
開けてぞ今朝(けさ)は 別れゆく

とまるも行くも 限りとて
互(かた)みに思う 千万(ちよろず)の
心のはしを ひとことに
幸(さき)くとばかり 歌うなり

筑紫のきわみ 陸の奥
海山遠く へだつとも
その真心は へだてなく
ひとえに尽くせ 国のため

千島の奥も 沖縄も
八洲(やしま)のうちの まもりなり
いたらん国に いさおしく
つとめよわがせ つつがなく


<蛍の光:歌詞の意味>一番のみ

■蛍の光 窓の雪
灯油も買えないほどの苦学生が蛍を捕まえ、その光を利用したり、窓から差し込む雪の照り返しの光を利用したりして夜も勉強をして、その人は立派な役人になったという中国の有名な故事に由来する歌詞です。「蛍雪の功(けいせつのこう)」という言葉として有名です。

■書読む月日 重ねつつ
前の歌詞の状況から、大変な苦労をしながら書物を読む日々を重ねながらという意味。

■いつしか年も すぎの戸を
「すぎの戸を」の「すぎ」は「過ぎ」と「杉」の掛け言葉になっています。「いつの間にか年月が過ぎ、杉の戸を」との意味です。

■開けてぞ今朝は 別れゆく
「杉の戸を開けて今朝は同窓の友と別れていく」という意味です。

この歌はスコットランド民謡のメロディに、日本語の歌詞をつけたものです。その原曲は「オールド・ラング・サイン」(Auld Lang Syne)であり、この歌は、スコットランドからヨーロッパ中に、さらにはアメリカ大陸へも広がってゆきました。明治10年代初めに、日本で小学唱歌集を編纂するとき、稲垣千頴が作詞した歌詞が採用され、「蛍の光」となりました。さらに、1881年(明治14年)に尋常小学校の唱歌として小学唱歌集初編に載せられました。

この歌詞の3,4番には「ひとえに尽くせ 国の為」「千島の奥も 沖繩も 八洲の内の まもりなり」といった軍国的な内容もあり、戦後はもっぱら1、2番が歌われています。

この「蛍の光」は日本では主に別れの曲として、そのような場面に使われています。卒業式ではかってはこの曲が主流でした。船が出港するとき、お店や公共の図書館などの閉店時、年末の「NHK紅白歌合戦」では最後にこの曲の大合唱が行われます。東京ディズニーリゾートの年越しのカウントダウン・パーティの際に、カウントダウン・セレモニーとして演奏されます。

蛍の光

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◆スコットランドの「オールド・ラング・サイン」(Auld Lang Syne)が「蛍の光」の原曲

蛍の光」のもとはスコットランド民謡の「オールド・ラング・サイン」(Auld Lang Syne)で、スコットランド語ですが、英語では"old long since"="久しき昔"のことになります。スコットランドでは準国歌ともいわれる歌です。

<Auld Lang Syneの歌詞と訳>

Should auld acquaintance be forgot,
And never brought to mind?
Should auld acquaintance be forgot
And auld lang syne?


古い友人は忘れ去られ、
もう二度と思い出されることもないのだろうか。
古い友人は忘れ去られ、
古き良き日々の記憶もまた、心から消え去ってしまうのだろうか。

For auld lang syne, my dear,
For auld lang syne,
We'll tak a cup o' kindness yet
For auld lang syne.


親愛なる友よ、古き良き日々のために、
古き良き懐かしい日々のために
親愛なるこの一杯を飲みかわそうではないか。
古き良き日々のために。

And surely you'll buy your pint cup !
And surely I'll buy mine !
And we'll take a cup o’ kindness yet,
for auld lang syne.


さあ、もう一杯やるだろう
私ももう一杯やろう
友情の杯をもう一度かわそう、
古き良き日々のために

この歌は6番までありますが、長いので3番までにします(このページ下部の歌の動画参照)。

日本では、卒業式などで歌われることが多かったので、別れの曲として広まりました。しかしこの歌は、スコットランドでは、「古い友人を迎えて酒を飲みかわし昔を懐かしむ」、という内容との受け取り方になっていて、披露宴や誕生日など、祝福の席で再会を誓って歌われてきました。また日本と同様、別れの時や、出港の時などにも歌われます。この「蛍の光」の原曲が日本に伝わったのは、明治の初め、スコットランドからの移民の多いアメリカからと言われています。

この歌の作詞者は、スコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズ(Robert Burns:1759-1796年)であり、古くからのスコットランドの伝承歌をもとに1788年に書いたものであると言われます。しかし作曲は諸説あります。イングランドのオペラ作曲家、ウイリアム・シールドが作曲したものではないかと言われています。1783年に作られた「Rosima/ロシマ」というオペラの中に類似のメロデイーがあるからです。別説があり、メロデイーは、地中海のコルシカ島の宗教行事で人々が歌っていたものを、ボビー・バーンズという人が編集した民謡集のなかに類似曲があり、これがメロディのオリジナルではないかとも言われます。したがって、このスコットランド民謡といわれる歌は、作詞はスコットランド、作曲はイングランドとも言えますが、長い間にスコットランドでは地元の歌として親しまれ、今ではスコットランド民謡として通っています。

スコットランドの国民的詩人:ロバートバーンズ

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さて、「蛍の光」は讃美歌370番「目覚めよ我が霊(たま)」としても知られています。この英語の詩は1775年のフィリップ・ドッドリッジの作で、バーンズの詩よりも少し前に作られました。 この讃美歌の方が先にできたかは定かではありません。メロディーとの組み合わせの上、この賛美歌がいつでき上がったかは分かりません。讃美歌の詩のほうは、先からありましたが、「オールド・ラング・サイン」の曲が流行りだし、この詩と後に組み合わせられ、賛美歌になったのだと言われています。

◆「Auld Lang Syne/オールド・ラング・サイン」とスコットランド民謡◆

日本では年末、紅白歌合戦の最後の場面や、ディズニーランド年越しで歌われますが、アメリカでは、大晦日の夜、0時に近づくと、「オールド・ラング・サイン」の合唱でカウントダウンして、新年を迎えます。年末ではなく新年を祝って歌われるところが、日本人と、この歌に対する感覚の違いが分かります。

では日本でなぜスコットランド民謡が好まれるのでしょうか? それは日本の伝統的な歌は「蛍の光」も含めて、「四七抜き(よなぬき・ファとシがない)」の五音階であり、スコットランド民謡は、この日本の古い音階と同じであることが一つの要因と言われています。これにより、スコットランドの歌が日本人の心の琴線に触れ、好まれるようです。明治の外国人音楽教師は日本人が「ファとシ」をうまく歌えないことが分かり、苦労したと言われます。

日本の伝統音楽には四七抜きが多い。

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この「蛍の光」の他に、日本に入ってきたスコットランド民謡があります。主なものを紹介します。

スコットランド民謡の楽譜

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■アニーローリー: Annie Laurie: 父親に引き裂かれたAnnie Laurieー恋の歌

■Comin' Thro'(Through) the Rye:故郷の空(日本語歌詞)ー夕空晴れて・・・
・ライ麦畑の茂みに入ったら、何をしていても見えない。男と女がそこで出逢ったら・・・

■Sweet Rose of Allandale: 愛しのアランデールのバラ
・この歌は卒業式の「仰げば尊し」のメロディーによく似ていて、部分的にはほぼ一致するところがあり、また曲調もよく似ています。

■The water is wide:悲しみの水辺
・ドラマ、マッサンの中でエリーがこの歌を歌っています。少し前のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」でも、修和女学校のスコット先生が、英語で窓辺で歌っていました。失われてしまった愛や過去を想う、切ない感傷の歌です。

■The Blue Bells of Scotland:スコットランドの釣鐘草(つりがねそう)
・徴兵された恋人を思い、帰りを待つ女性の心。この中のBlue Bellはとても綺麗な薄紫色をしているスコットランドの国花で、冷涼な山間地に咲いていてなかなか見れない。日本ではこのメロディは馴染みが薄い。(下部の動画参照)

スコットランドの国花、Blue Bell(ブルーベル)

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◆"Comin' Thro'(Through) the Rye"(故郷の空)はいろいろ変化しました。

この中でよく日本で知られているのが"Comin' Thro'(Through) the Rye"/故郷の空(大和田建樹:作詞)ですね。NHK朝のドラ「マッサン」のエリー(スコットランド人でマッサンの奥さん)が時々歌っていました。

「故郷の空」:1番(日本語歌詞)

夕空はれて あきかぜふき
つきかげ落ちて 鈴虫なく
おもえば遠し 故郷のそら
ああ わが父母 いかにおわす


この歌は、明治中期に「明治唱歌 第一集」に収録され、小学唱歌として広く親しまれてきました。

戦後になって、スコットランド原詩に近い形で日本語の歌詞が少し変わりました。これが現在でも歌われている「麦畑」です。

「麦畑」(誰かが誰かと):1番歌詞(大木惇夫:作詞)

だれかがだれかと むぎばたで
こっそりキスした いいじゃないの
わたしにゃいいひと ないけれど
だれにもすかれる ねむぎばたで


ウィスキーやビールの原料となる大麦畑

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ところで、スコットランドの"Comin’ Thro’ the Rye"=「故郷の空」は、ドリフターズのヒット曲「誰かさんと誰かさん」とメロディは同じです。原曲は麦畑の中で起こる「出来事」を明るく歌い上げた民衆の歌であり、これもその傾向の歌ですね。

「誰かさんと誰かさん」1番歌詞(なかにし礼作詞)

誰かさんと誰かさんが 麦畑
チュッチュチュッチュしている いいじゃないか
僕には恋人 ないけれど
いつかは誰かさんと 麦畑


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

蛍の光」とスコットランドの原曲を書き出したら、長くなってしましました。蛍の光にはまだワルツ風の曲のあり、それがデパートなどではよく使われている由来など、書きたかったのですが、長いので止めました。朝ドラで「悲しみの水辺」が歌われたときは、少し前から知っていたので、聞き入りました。静かな良い曲ですね。Blue Bellは少し前にスコットランドに行った時に、幸いに見ました。イギリス人でも野生のBlue Bellをなかなか見れなく、専門のこの花を見るツアーがありますが、それでも見れないことが多いようです。

こんなことを書いていたら、またあのスコットランドの涼しげな丘と、ウィスキーの味を思い出してきました。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「スコットランドの歌が日本人の心の琴線に触れ好まれる。それにスコットランドの民謡は、この日本の古い音階と同じ」とか、そうだったんですね、美しいメロディですが、どこか愁いがあり日本人の心情にぴったりです。スコットランドの民謡、たくさん日本に入ってきているんですね、知らずに口ずさんでいたメロディー、懐かしいものばかりです。紹介してくださったものを見て驚いています。スコットランドに行ったことがないです、このような曲が生まれた国をいつか訪れたくなりました。

Anne
2015/02/08 23:03
Anneさん
確かにスコットランド民謡は、どことなく日本人の心に入ってくるような安心感、憂い、懐かしさといったものが感じられます。音階だけではないような気がします。明治時代から、日英同盟で結ばれ、スコットランドには多くの日本の八重桜が植えられていて、私が訪問したときは満開で、長いストリートが延々と続く、満開の桜並木でした。スコットランドのウィスキーが日本に導入され、ここ数年、イギリスのウィスキー・コンテストで最高賞を日本のサントリー、ニッカが獲得しているのもうれしい話です。

私は"The Water is Wide"(悲しみの水辺)の歌と、Blue Bellの花が、好きなジャカランダの花に似ているので好きで、スコットランドでこの花を見れたのはとても幸せでした。

いつか、もう一度、あのスコットランドに行きたいと思っています。
Jack
2015/02/09 16:39

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