Jackと英語の木

アクセスカウンタ

zoom RSS ハドリアヌスの長城、バース、バーデン・バーデンの温泉などー映画「テルマエ・ロマエ」にちなんで

<<   作成日時 : 2014/08/21 19:14   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 2

今年前半の日本映画のヒット作品の一つに阿部寛・上戸彩主演の「テルマ・エロマエ2」があります。コミックからの映画化の続編で、古代ローマ人が日本の温泉にタイムスリップしてまたローマに戻り、日本温泉文化をもとにした浴場をローマやローマ帝国領内に作り上げる痛快な物語です。映画ではローマはもとより、北方の遠征先や日本の草津温泉、宝川温泉など各地の温泉が出てきます。古代ローマ人は大の温泉、風呂好きで占領したヨーロッパ各地に温泉を求め、種々のローマ文化を残しています。

「テルマエ・ロマエ/THERMAE ROMAE」とはラテン語のテルマエ(温泉、浴場)とロマエ(ローマ人の)ことで、「ローマ人の温泉」のような意味です。第1作目はローマでしたが、この続編映画は2013年ブルガリアの首都ソフィアの ヌ・ボヤナ・フィルム・スタジオ(Nu Boyana Film Studios)にて撮影されました。もちろん日本の温泉の場面は、現実の草津など各地でロケされました。

映画「テルマエ・ロマエ2」

画像


「テルマエ・ロマエ2」にちなんで、ちょっとインスピレーションが働き、今回はこの映画に関連がある古代ローマが残した各地の砦(長城)と、ヨーロッパの温泉について書いてみました。

「テルマエ・ロマエ2」のロケ地:宝川温泉(群馬県)

画像


★ハドリアヌス帝が作ったイギリスの長城

映画「テルマエ・ロマエ2」には、ローマ5賢帝の一人であるローマ帝国第14代のローマ皇帝(117年 - 138年在位)の「ハドリアヌス帝」が出てきます。この皇帝の頃は、古代ローマの最大版図を誇っていた時代で、北はロシアの南の地域、南はエジプト、チュニジア、モロッコなど北アフリカ、東は中東地域、西はヨーロッパ主要部からイギリスまでが帝国領でした。

ローマはイギリスに侵入し、北のスコットランドまで攻めています。しかしスコットランドの防御は固く、寒冷地で山がちのため攻めあぐね、ついに西の万里の長城と言われる「ハドリアヌスの長城」(Hadrian's Wall)を2世紀初めに築いて、イギリスの占領地を固めました。この長城は1987年にユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。イギリス北部を横断するように横たわり、約110kmの長さと、高さ約5m、厚さ約3mがあります。これはその後もイングランドとスコットランドのほぼ境界線のような役割を果たしました。私もこの長城を、スコットランドから湖水地方へ行く途中に、スコットランド/イングランドの境界付近で見ました。

ローマ帝国が築いた延々と続くハドリアヌスの長城

画像

上記長城建設の20年後、さらに160km北部に、長さ60kmの「アントニヌスの長城」(Antonine Wall)が作られましたが、これは「ハドリアヌスの長城」に比べ、長さも、高さ、厚さも劣るもので、しばしばスコットランド人に攻撃され、20年後にはローマ軍はハドリアヌスの長城まで撤退しました。今では世界遺産になっていて、「ローマ帝国の国境線」の登録名で、イギリスの「ハドリアヌスの長城」と「アントニヌスの長城」、さらに追加拡大登録で、ドイツの「リーメス」(下記に記述)が入っています。

ハドリアヌスの長城とアントニヌスの長城の位置

画像

古代ローマはヨーロッパ各地に防御用の壁、土塁を作っており、イギリスの長城とともに、ドイツにはリメス(Limes)と言われる、ライン川からドナウ川にまたがる総延長約550kmにもなる土塁による長城と堀のローマの防砦壁があり、イギリスの長城と共に古代ローマが残したものとして、世界遺産になっています。

ドイツの世界遺産リメスの土塁

画像


ドイツ、リメスの防御碧の位置(地図の点線)

画像


★バース(英)、バーデンバーデン(独)はテルマエ・ロマエの外国版温泉

古代ローマ人は大の温泉、風呂好きで、紀元前1世紀から浴場はあったようで、4世紀ごろにはローマには400もの浴場があったと言われます。温浴室、サウナ、マッサージ場、運動場や図書館まであって、皇帝から平民まで入浴したらしい。有名なカラカラ浴場は216年にローマ皇帝カラカラによって建設された公衆浴場であり、今もその遺跡が残っています。ローマ人は進出したヨーロパ各地にも浴場を造りました。以下は代表的なものです。

●バース(bath:イギリス)

バース/bathは、ロンドンの西150km、コッツウォルズの西側にあり、2世紀にローマ人がイギリスに進出時に温泉を発見して、「アクアエ・スリス」(Aquae Sulis:スリス温泉)と名づけました。しかしローマ人が温泉を発見する紀元前から、ここには既に温泉があり、ケルト人が利用していたらしい。その当時ケルト人は、地表から噴き出す高温のお湯 を見て、ここは女神スリスの棲み家の温泉と考え、近くに神殿を建立しました。 ローマ人もこの「スリスの神」にちなんで「スリス温泉」と当時名づけました。

ローマ人はここに巨大な温泉施設と神殿を建設しました。スチーム風呂、マッサージ室、水風呂などもある総合的な温泉施設であり、ヨーロッパ中から人々が来たそうです。

ローマ人が去った後、バースは衰退し、温泉施設もほとんど見捨てられていました。しかし18世紀、再び温泉リゾートとして復活しました。上流階級の人々の社交場が作られ、周りには洒落た住宅も作られました。

イギリスのバース:今でも残っている古代ローマの温泉

画像


ここの温泉ははまずケルト人が発見したと言われていて、その地名が、英語の"bath"(風呂)の語源となったというのは俗説です。英語の"bath"の語源は、「暖めること」もしくは「風呂」を意味するゲルマン古語に由来します。"Bath"という地名が先ここにあったのではなく、この地にたまたま温泉(風呂)があったからそれを意味する"Bath"という地名になったのです。バースという地名が英語の風呂(バス)の語源となったというのは誤解で、「温泉・風呂」の意味の"bath"がここの地名になったのであって、名付けの順序が逆です。ドイツのバーデンバーデンの"baden"も"baden"(入浴する)からで、この英語の"bath"と言語的に関連があります。

バースには古代からの遺跡がある。


画像


●バーデンバーデン(Baden-Baden:ドイツ)

ドイツ中部の黒い森近くに、有名な温泉地バーデン・バーデン(Barden-Baden)があります。ドイツには意外と多くの温泉がありますが、ここは古代ローマから温泉地として栄えてきました。ローマ人は遠く遠征に出ても、ローマにあるような温泉を探し、浴場を作ってきました。バーデン・バーデンの地では、古代ローマ帝国軍により、ここに多くの源泉が発見されました。ローマ人は、この地を皇帝アウレリウスにちなんで、「アウレリウスの泉」の意味の"AureliaAquensis"と呼び、多くの浴場を建設しました。温泉を楽しむ他に、負傷した兵士や人々の病気療養などに利用されました。

ドイツ人はローマが撤退した後、この地をバーデン・バーデンと呼ぶようになりました。Badenという名前は、「入浴(する)」ことを意味しており、そこからバーデンという地名になりました。バーデンを2回重ねることでバーデン・バーデンは「温泉の中の温泉」と言う意味になります。

ドイツ、バーデン・バーデンの温泉は古代ローマにより開発された。

画像


ローマ人が去った後、中世には温泉は一時衰退しましたが、18世紀半ばから、王室、貴族の避暑地、社交場として発展し、19世紀になると、カジノなど娯楽施設も整備され、1872年には、浴場施設としてされ整備されたフリードリッヒ浴場が建設されました。現在ではバーデン・バーデンは、クアハウス、フリードリッヒ浴場を中心に、ホテル、コンベンション施設、医療施設があり、保養、娯楽、治療施設の充実した、ヨーロッパ随一とも言える総合的な温泉保養都市となっています。

ドイツのバーデン・バーデンの位置

画像


●スパ(Spa:ベルギー)は古代ローマの残したもので、田舎の鉱泉の名前が世界中で便利に使われる言葉になった。

ベルギーにある「スパ」(Spa)は、今や世界中いたるところで便利に使われている温泉の代名詞のようになっています。一体何故"Spa"がこんなに有名になったのでしょうか?

1世紀に古代ローマ人によってここに鉱泉があることが発見され、「不思議な泡立つ泉」として評価されていたと言われます。普通の温かい温泉ではなく、低音の白く泡立つ鉱泉だったからです。「スパ」は首都ブリュッセルから東へ100km程のところにある、今では人口1万に満たないベルギーの田舎町です。「水の町」といわれ、200以上の源泉があり、湧出する水はミネラル分を多く、飲泉効果が高く、炭酸ガスを含む源泉もあります。

さてスパからローマ人が去ると、他の温泉地と同様にここは中世まで衰え、その名は歴史から消えていました。14世紀に入って、温泉が再発見されて「スパ」という地名になったのです。一時は温泉保養地として、ヨーロッパ各地から王侯貴族も大勢集まって、とても栄えました。16世紀末からは、イギリスの温泉保養地が「スパ」の名をとても使い出しました。英語には温泉というと"Hot Spring"と長ったらしい単語しかなかったからです。"Spa"は英語化して、アメリカに広がり、またヨーロッパにも逆輸入され、次第に単なる温泉という意味から、ヘルスリゾートや、治療や癒しなど総合的な温泉施設の意味合いを主に持つ言葉に変化して、世界中で使われるようになりました。

ベルギーのスパ(Spa)

画像


ところで、"Spa"とはどんな意味があるのでしょうか?Spaの語源は諸説ありますが、代表的なものは下記です。

*ワロン語(北フランス方言)のエスパ(泉)、ラテン語のスパゲーレ"Spargere"(湧き出る、まき散らす--->スプリング/spring、スパーク/sparkなどの語源となった)から。

*Spaはラテン語の"Salus Per Aquam"(水による癒し)で、S:SOLUS治療する、P:PER〜を通して、A:AQUA水の頭文字から。


現在、"Spa"スパを温泉の意味だと思っている人は多いようですが、元々はベルギーの地名だということを知っている人は少ない。"Spa"を辞書で引くと「鉱泉」と出てきます。便利な言葉として、"Spa"は今や単なる温泉の意味合いだけではなくなってきています。

ベルギー、スパは泡立つ鉱泉でsparkling mineral water(ミネラル炭酸水)。

画像


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
映画「テルマエ・ロマエ2」の印象から、思いついたものを書いてみました。温泉文化おいては、古代ローマと日本の温泉は似ているところが有り、この作者もこんな奇想譚外の物語を考えたのでしょうね。日本でロケした各地の温泉は、今「テルマエ・ロマエ2」でロケ地になりましたと宣伝して、結構賑わっているそうです。映画で滝が見える露天風呂が出てきたので、見覚えがありチェックしてみたら、かって宿泊した伊豆の天城の河津七滝近くの「天城荘」でした。滝を見ながら多くの露天風呂があり、またここの温泉に行きたくなりました。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
映画「テルマエロマエ」を見てなぜ古代ローマの温泉と、日本の温泉を関連づけたのか、不思議に思っていましたが、このトピックで納得しました。それにしても、スパは英語の辞書にも乗っているので語源のことは考えなかったですが、ベルギーの地名だったんですね。ローマ人の温泉好きが、かって進出した国々に、いったんは衰えても、温泉の効用が見直され、愛されているとは面白いです。映画の露天風呂が、「天城荘」だったとは初めて知りました、今度宿泊してみたいです。
Anne
2014/08/21 20:48
Anneさん
日本の温泉文化は、温泉がある他の国の温泉とはちょっとおもむきが違いますね。その点古代ローマの温泉、浴場文化は似ているところがあります。私もイタリアで温泉に入ったことがあります。
Spaは温泉と当たり前のように思い込んでいる人が多いようですが、元は地名であり、逆にバースは温泉がわくところの意味から地名がBathになったなど、面白いですね。Bathについては勘違いして覚えている人だけでなく、辞書の一部まで勘違いして書いてあるものがあります。

伊豆の天城荘は踊り子コースをウォーキングしてから泊まり、たくさんの露天風呂を目の前の天城大滝を見ながら入りました。洞窟風呂、薬草風呂などもあり、おもしろいところです。
Jack
2014/08/22 16:31

コメントする help

ニックネーム
本 文
Google
ハドリアヌスの長城、バース、バーデン・バーデンの温泉などー映画「テルマエ・ロマエ」にちなんで Jackと英語の木/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる